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蜘蛛天井

ウーヴェ「あの野郎、今度会ったら絞め殺してやる。」
ジークムント「まさか、依頼主が消えるとはな。やはり神なんかおらん。」
赤猫「ついてないよ。ホント…って雨が降ってきた。
   もう本当についてないよー!」


山道を急ぐ3人。彼ら「黒犬団」の面々が怒るのは無理はない。
なんせ護衛依頼を受けたのにも関わらず、依頼主が目的地直前でバックレたのだ。
迂闊にも前金を貰わずに引き受けたこの依頼。自分らのミスも重なり腹が立つ。
その上に、この雨だ。運命を呪わずにはいられない。

ウーヴェ「なんなんだよー!クソがっ」
赤猫「見て。屋根が見える」
ジークムント「ありがてえ。クソ神様にも少しは温情ってもんがあるんだな。」
赤猫「断られたからって荒っぽいことはダメだよ!」

渡りに船とばかりに屋敷に駆け込んだ三人。
ウーヴェが荒々しくノックをすると、出てきたのは女主人。

ウーヴェ「旅の者だが、一晩の宿をお願いしたい。」
女主人「そういうことでしたら、どうぞ。」

拍子抜けするほどアッサリ快諾を貰うと、
3人は一室に案内された。

ウーヴェ「ふぅ。やっと一息つけたぜ。」
ジークムント「ああ。最悪野宿かと思った。」
赤猫「この雨の中でホント洒落にならない。」
ウーヴェ「それにしても、ボロ屋敷のわりに部屋は、随分綺麗だな」
赤猫「他の部屋は蜘蛛の巣だらけだったし、奇妙よね」
ジークムント「引っかかるな」
赤猫「山姥だったり」

携帯食料片手に思い思いに談笑する三人。
まさか屋根のある部屋で寝れるとは思っていなかったので
引っかかる案件であったものの、3人とも上機嫌。

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深夜

サワサワという虫の音が聞こえる。
ホビット特有の聴覚により、赤猫が目を覚ますと、
今まさに襲わんとする、異形の姿があった

赤猫「起きてっ!!」

悲鳴に近い絶叫に、二人は起き上がる。

ウーヴェ「なんじゃこりゃ!!女主人じゃねえか!?」
ジークムント「赤猫の予感が当たるとはなっ」
赤猫「山姥ではないけどね!」

咄嗟に状況を理解し起きた二人は応戦する。
だがこの化け物、思いのほか強い。

まずジークムントが糸に絡めとられ、身動きがとれず昏倒。

「クソがっ!!」とウーヴェが膂力を頼りに暴れまわり、手傷を負わせることができたが
彼もまた力尽きた。

すわ全滅かと思われたところ、一本の矢が化け物の眉間に吸い込まれた。



凄まじい絶叫を上げながた崩れ落ちる化け物。

赤猫「死んだ…?」

崩れた化け物に恐る恐る近づく赤猫。
二人が化け物を引きつけている間、彼女はひたすら機会をうかがっていたのだ。

ピクリとも動かない化け物に、大きく安堵のため息をつくと、彼女はその場でへたりこんだ。

赤猫「助かったぁ」



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翌日、古屋敷に火をつけるとリューンの帰途に着く三人。
報酬もなく、路銀もなく、ただただ昨夜の戦闘で負った傷が痛む。

ジークムント「やっぱり、神様なんていないんだな。」
赤猫「知ってた。」
ウーヴェ「クソがっ…」

三人の足取りは重い。

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